第124章 招かれざる客<参>
「行くわよ!あたしから離れないで!」
汐はそう言って刀を納めると、鉄火場の手を取ろうとした。
「あ、ちょっとお待ちください!」
「何!?まだ何かあるの!?」
汐はこんな時に何を言い出すのかと言わんばかりに、鉄火場を睨みつけた。
「鋼鐵塚の元へ行きたいのです。鬼の襲撃を知らせないと。あいつはきっと、この騒ぎを知りません」
「知らないって、これだけ派手に鐘の音が鳴ってるのに、気づかないわけないわよ。きっと逃げてるわ」
汐の言葉に、鉄火場は首を何度も横に振った。
「いいえ。鋼鐵塚は一度仕事に没頭すると、誰が何をしようとも己の仕事を全うするまで決して動きません。にわかには信じられないかもしれませんが、あの人はそういう人なんです!!」
鉄火場は身体を震わせながら叫ぶように言った。汐は一瞬だけ迷ったが、今までの経緯を見て、彼ならありえない事ではないと思いなおした。
「わかったわ。鋼鐵塚さんの所に行きましょ!鉄火場さんは何処にいるかわかるのよね?」
「はい!存じております!」
「じゃあ道案内をお願い。走るからあたしの手をしっかり握って」
汐はそういうと、鉄火場の手を取って走り出した。勿論、鉄火場の事を考えていつもよりは速度を落として。