第124章 招かれざる客<参>
「鉄火場さん!鉄火場さん!!」
汐は、鉄火場の工房の扉を叩きながら声を張り上げた。すると少し間をおいて、中から鉄火場が顔を出した。
「汐殿?こんな時間にどうして・・・。いやそれよりも、里が何やら騒がしいようですが・・・」
怪訝そうにそういう鉄火場に、汐は矢継ぎ早に捲し立てた。
「鬼よ!里に鬼が出たわ!!」
「えっ、鬼が!?何故・・・」
「いいから早く逃げる支度をして!!」
汐の言葉に、鉄火場は慌ててうなずくとすぐさま荷造りを始めた。その間に汐は、刀を抜いて周囲を警戒する。
あちこちから鬼の気配はするが、炭治郎のように正確な位置まではわからない。しかしその気配は、先ほど見た分裂する鬼とは異なるものだった。
(やっぱりさっきの奴の気配じゃない、別の鬼がいるわ。もしも上弦だとしたら相当やばい・・・!)
汐は微かに震える身体を叱咤しながら、神経を研ぎ澄ませた。
「お待たせいたしました!」
数秒後、風呂敷を抱えた鉄火場があわただしく出て来た瞬間、里中に半鐘の音が響き渡った。
既に鬼の報せは里中に広がっているようだ。