第123章 招かれざる客<弐>
「むっ!!!」
鬼の気配を感じた禰豆子は、放心する兄を叱り飛ばすように声を上げた。
(そうだ、放心なんかしている場合じゃない。柱の時透君は勿論、汐も強くなっている。こんなところでどうにかなるはずがない!!)
炭治郎は禰豆子の手を握り返すと、自信を奮い立たせて目の前の敵を見据えた。
「カカカッ!」
団扇を振った鬼が、楽しそうに笑いながら炭治郎達を見据えていた。
頭が生えた鬼は、先ほどは持っていなかった錫杖をもって腹立し気に隣を睨みつけていた。
「楽しいのう。豆粒二つが遠くまでよく飛んだ。なあ、積怒」
積怒と呼ばれた鬼は、苛々と頭を振りながら答えた。
「何も楽しくはない。儂はただひたすら腹立たしい。可楽・・・、お前と混ざっていたことも」
「そうかい。離れられてよかったのう」
可楽と呼ばれた鬼は、怒ることもなく楽しげに笑いながら舌を出した。
その長い舌には、【楽】という文字が刻まれていた。
(また同時に頸を斬らなきゃ駄目なのか!?)
だとしたら、今ここに居るのは炭治郎と禰豆子の二人だけ。しかし禰豆子では、鬼に傷は負わせても致命傷を与える事はできない。
圧倒的に不利な状況だが、炭治郎は迷っている暇などなかった。
何とかして、一人でも同時に頸を斬らなければ・・・!!
炭治郎が意を決して斬りかかったその時、積怒の持っていた錫杖が動き、その柄を畳に突き刺した。