第123章 招かれざる客<弐>
「やめてくれええ、いぢめないでくれぇ。痛いぃいい」
震えながら痛みを訴える半天狗に、炭治郎は一瞬だけ戸惑った。だが、汐の殺意の匂いが炭治郎を現実へと引き戻した。
(気後れするな。大勢人を殺している鬼だ!!そうでなきゃ柱の攻撃を避けられない)
「あたしが動きを封じるわ!!」
汐が前に飛び出し、半天狗へ向けて口を開いた。
――ウタカタ・参ノ旋律――
――束縛歌!!!
空気が張り詰める音と共に、鬼の体が一瞬強張る。その隙を突いて炭治郎は刀を抜いた。
――ヒノカミ神楽――
――陽火突(ようかとつ)
「ヒィィィ」
炭治郎の突きが鬼のいる場所を綺麗に穿ち、半天狗は畳に落ちると悲鳴を上げた。
だが、何故か反撃してくる様子がない。
不審に思う炭治郎の横から禰豆子が飛び出し、身体を大きくすると左足を半天狗の腹に思い切り叩きつけた。
「ギャアアアッ!!」
その蹴りの威力に半天狗は吹き飛ばされ、濁った悲鳴を上げた。だが、炭治郎は禰豆子が以前にこの姿になった時、我を忘れてしまった事を思い出した。
「禰豆子!その姿になるな!!」
禰豆子はぴくりと身体を震わせ動きを止め、その間を縫って無一郎が斬りかかってその頸を落とした。
「ヒイィィ、斬られたああ」
涙を流しながら、半天狗の頸が宙に舞う。汐と炭治郎は、無一郎の驚くべき剣捌きに度肝を抜かれた。
普通なら、これで勝負はついただろう。
しかし、相手は上弦の鬼。以前に戦った妓夫太郎と堕姫は、普通に首を斬っても死ななかった。
もしかしたら、この鬼もただ頸を斬っただけでは死なない可能性もある。
それを経験済みの汐と炭治郎は、無一郎に向かって叫んだ。