第123章 招かれざる客<弐>
日が沈んだ頃。汐は長である鉄珍に挨拶を済ませ、里を出る準備を整えた。
だがその前に、汐は炭治郎に挨拶をするために部屋を訪れた。
(炭治郎、いるかな。あいつにはなんだかんだでまた世話になっちゃったし、ちゃんと挨拶をしていこう)
汐は逸る気持ちを抑えて、部屋の前で炭治郎に声を掛けた。
「炭治郎、炭治郎。いる?」
すると少し間を開けて「汐か?」という炭治郎の声が返ってきた。
「そうよ。あんたに挨拶をしに来たの。入ってもいい?」
「あ、えっと。うん、いいよ」
しかし次に返ってきた声は、心なしかぎこちなく、汐は少し不審に思いながらも襖を開けた。
「あれ?あんた・・・」
そこにいたのは、炭治郎と向かい合って話す無一郎だった。
「あんた、生意気柱!!」
汐は思わず叫びながら人差し指を突き付けると、無一郎は少しだけ眉をひそめながら「誰それ?」と言った。
「なんであんたがここに居るの?ここは炭治郎の部屋なんだけど」
「僕がここに居ることが君に関係あるの?」
相も変わらず棘のある言い方に、汐のこめかみがぴくぴくと痙攣しだした。
それを見た炭治郎は、慌てて二人の間に割って入った。
「時透君は新しい担当の鉄穴森さんを捜しているんだって。多分鋼鐵塚さんと一緒だと思うから、俺は一緒に捜そうって話していたんだ」
「あんたが?わざわざ?」
「うん。俺も鋼鐵塚さんに会いたいと思っていたからちょうどよかったって思って」
そう言ってほほ笑む炭治郎に、汐は呆れと相も変わらず優しい心を持つ炭治郎をうれしく思った。