第122章 招かれざる客<壱>
「玄弥、あんた・・・」
「見間違いじゃないよ。その時の歯取ってあるから」
炭治郎は懐から取り出した歯を玄弥の前に突き出した。それを見た玄弥は顔を青ざめさせ叫んだ。
「なんで取ってんだよ!気持ち悪ィ奴だな!」
「いやだって、落とし物だし返そうと」
「正気じゃねえだろ!捨てろや!」
「炭治郎あんた、流石にそれはないわ・・・。ありえないわ・・・」
きょとんとする炭治郎と対照的に、汐と玄弥は顔を思い切り引き攣らせていた。
「ああもう!!お前らいつまで居座ってんだ!!さっさと出てけ!!」
玄弥は炭治郎を蹴りだし、汐を押し出すと障子を音を立てて閉めてしまった。
「なんであんなにずっと怒っているんだろう。やっぱりお腹が空いているのかなあ」
「あんたが非常識だからでしょ!落とし物って言って歯を持ってくるのはあり得ないわ」
汐がきっぱりとそう言うと、炭治郎は納得できないように唇を尖らせた。
「あ、さっきは言いそびれたけれど。あたしそろそろこの里を発つことになると思うの」
「えっ、もう?」
「刀もできたし、懐剣の方は置いて行っても問題はないからね。今こうしている間にも、どこかの誰かが鬼に襲われているだろうし」
汐は決意に満ちた顔で炭治郎を見た。汐と別れるのは寂しいが、鬼殺隊員である以上当然のことだと思った。
「そうか、そうだよな。じゃあ発つときは行ってくれ。見送るから」
「ありがとう、そうさせてもらうわ。さて、あたしは鉄火場さんが気になるし、挨拶も兼ねてちょっと出てくるわね」
汐はそう言って炭治郎と別れると、鉄火場の元へ向かった。