第122章 招かれざる客<壱>
「俺に任せろと言ってるだろうが!!」
「うわああああ!!大人のする事じゃない!!」
「こんの37歳児!!いい加減にしなさいよ!」
――ウタカタ・参ノ旋律――
――束縛歌!!!
汐は怒りのあまりウタカタを放ち、鋼鐵塚の身体を拘束した。が、それは一瞬の事で彼は暗示を振り払うと再び暴れ出した。
「「ほぎゃああーーーー!!!」」
これには汐だけでなく炭治郎も、目玉がまろび出る程に驚いた。万事休すか、と思ったその時。
「少年達よ。鋼鐵塚さんの急所は脇です。ここを狙うのです」
この場に似つかわしくない冷静な声と共に、鋼鐵塚の背後に回っていた人影が彼の両脇をくすぐった。
すると鋼鐵塚は情けない声で笑いながらその場に倒れた。
「あ、あなたは・・・、鉄穴森さん?」
そこにいたのは、伊之助の刀を打った刀鍛冶師、鉄穴森鋼蔵だった。
「ご無沙汰してます。お元気でしたか?」
最後に会ったのは、鋼鐵塚、鉄火場と共に伊之助の刀を蝶屋敷に持ってきたときであり、あの時は伊之助の暴挙のせいで二人は散々な目に遭っていた。
「お久しぶり、炭治郎君、汐さん。鋼鐵塚さんはくすぐられるとしばしぐったりしますので、私から説明しましょう」
鉄穴森は一つ咳ばらいをすると、そっと口を開いた。
「二人とも、鋼鐵塚さんを許してやってくださいね。山籠もりで修行していたんですよ」
「山籠もり?」
「修行?」
二人がきょとんとしながら聞き返すと、鉄穴森は鋼鐵塚が炭治郎を死なせないよう強い刀を作るために、己を鍛える修行をしていたと説明した。(その時小鉄は、気絶している鋼鐵塚に向かって石を投げつけていた)
感動のあまり涙を流す炭治郎に、汐は(刀鍛冶師の修行じゃないんじゃない?)と心の中で冷静に突っ込んだ。
「炭治郎君はずっと鋼鐵塚さんに刀をお願いしているでしょう?嬉しかったんだと思いますよ。この人、剣士さんに嫌われて担当外れる事多かったから・・・」
「そうなんですか?」
顔を歪ませる炭治郎に、小鉄は鋼鐵塚に対してさらに厳しい言葉を投げつけた。