第122章 招かれざる客<壱>
「炭治郎!!」
「大丈夫ですか、炭治郎さん!!」
汐と小鉄は尻を抑えて悶絶する炭治郎に駆け寄った。
「ご、ごめん小鉄君。借りてた刀折れちゃった」
「あんたねぇ、少しは自分の心配をしなさいよね」
「そうですよ。炭治郎さん、あんた人が良すぎです」
二人の言葉に炭治郎は微妙な顔をするが、小鉄が人形の方に顔を向けて小さく叫んだ。
振り返ってみれば、人形の頭部が砕けており、その中からは一本の刀が姿を現していた。
「で、でた!!なんか出た!!ここここ、小鉄君、なんか出た!!何コレ!?」
炭治郎は混乱しているのか、疲労困憊しているはずなのに小鉄を両手で軽々と抱えていた。
「いやいやいや、分からないです俺も!!何でしょうこれ!!」
小鉄も混乱しているのか、喚きながら炭治郎の両手を使い見事な倒立を決めていた。
「あんた達驚きすぎじゃない?ただの刀じゃないの」
「いやいやいや!少なくとも三百年以上前の刀だぞ!?やばいよ、やばいよね、どうする!?」
炭治郎と小鉄は全身を真っ赤にして荒い息を吐きながら、人形の中の刀を凝視していた。
「・・・あんたらすごい顔になってるわよ?鏡持ってきてあげようか?」
「逆に汐さんはなんでそんなに冷静なんですか!?普通人形の中から刀が出てきたら驚くでしょう!?」
「そう?鬼殺隊なんてやってれば、大抵の事には驚かなくなるわよ」
汐はさも当たり前のように言うと、二人は何とも言えない顔で汐を見つめた。
「あ、そうだ。炭治郎さん!!この刀貰っていいんじゃないですか?もももも、貰ってください、是非!!」
小鉄は興奮のあまり呂律の回らない口でそういうが、炭治郎はその申し出を拒否した。
「やややや、駄目でしょ!今まで蓄積された剣戟があって、偶々俺の時に人形壊れただけだろうし、そんな」
「いえいえ、炭治郎さん、ちょうど刀を打ってもらえず困ってたでしょ>いいですよ、持ち主の俺が言うんだし」
「そんなそんな、君そんな」
「戦国の世の鉄は凄く質がいいんです。もらっちゃいなよ。ゆう」
「いいの?いいの?っていうか、ゆうってなに?」
再び組体操を始める彼らに、汐は「阿呆かこいつら」と小さく言うと、出現した刀をまじまじと見つめた。