第121章 記憶の欠片<肆>
汐は息を乱したまま佇んでいたが、ふと我に返ると慌てて小鉄の方を向いた。
「も、もしかしてあたし、人形ぶっ壊しちゃった!?炭治郎の訓練まだ済んでないのに!?」
小鉄ははっとしたように肩を震わせると、慌てて人形の方へ走り出した。
汐と炭治郎も小鉄に駆け寄り、心配そうに見守った。
小鉄はしばらく人形を調べていたが、小さく息をつきながら言った。
「大丈夫、みたいです。少し傷はできてますが、動きに支障はありません」
「そ、そうなの。よかったわ。結構深く入っちゃったから、心配してたのよ」
汐はほっと胸をなでおろすが、汐はほっと胸をなでおろすが、心なしか小鉄は汐から距離を取りながら話しているように見えた。
お面で顔は見えないが、小鉄は明らかに汐に怯えていた。
「じゃあ次は俺の番だな」
体力が回復した炭治郎は、汐に負けていられないと意を決して刀を構えた。
汐が来たせいか、それともしっかり休憩を取ったせいか。炭治郎は先ほどよりも身体が軽くなっていることを感じた。
そして先ほど少しだけ感じた、隙の糸とは異なる匂い。今度は先ほどよりもはっきりと感じた。
左側頭部から始まり、首、右胸、左わき腹、右腿、左肩・・・
(来る!!)
炭治郎は目を見開き、人形の一撃を躱すとその刀を人形に向かって叩きつけた。
その一撃は人形を大きく揺らすが、破壊するほどではなかった。