第121章 記憶の欠片<肆>
どれくらい意識を飛ばしていたのか。炭治郎がふと目を開けると、目の前に何かが置かれているのが分かった。
ぼやける視界の中、目の前のものが一つの水筒であることに気が付いた。
「!!」
炭治郎はすぐさま水筒を手に取ると、口をつけて一心不乱に中身を飲み干した。
少しぬるくなってしまった水だったが、今の炭治郎にとっては極上の飲み物だった。
水を飲んで落ち着いた炭治郎は、その水筒に見覚えがある事に気づいた。そして、匂いも。
(これは、汐の水筒!まさか、汐がここに!?)
炭治郎の心に嬉しさがこみ上がり、礼を言おうと辺りを見回した。
「あれ、汐?どこだ・・・?」
周りに汐の姿はなく、炭治郎は汐を捜そうと体を起こしたその時だった。
何処からかうめき声が聞こえ、炭治郎はびくりと肩を震わせた。
その時初めて、炭治郎は小鉄の姿がないことに気づいた。
炭治郎が恐る恐る顔を向けると、そこには。
「うぅうーーー、むぐうううーーーッ!!」
全身を縄で雁字搦めに縛られ、口には猿轡を噛まされた小鉄が、木の上から吊り下げられていた。
その下には不自然に木の枝が積み上げられ、その前では静かにたたずむ汐の姿があった。
「何をしているんだァ――――!!!」
それを見た炭治郎は、疲れを忘れて思わず叫んだ。