第121章 記憶の欠片<肆>
時間は遡り。
炭治郎は小鉄から、人形で鍛えて何が何でも無一郎に一泡吹かせてやれと焚きつけられていた。
小鉄の復讐はともかく、炭治郎は無一郎が自分よりも年下で小柄なのに素晴らしい才能を持っていることに、心から感心していた。
そして負けていられない、強くならなくてはならないと心に誓った。
大切な人を守るため。大切な人の想いを繋ぐため。
だが、人形との訓練は想像を絶するものだった。
無一郎のせいで腕が一本破損したとはいえ、人形は的確に炭治郎の弱点を突く動きをしてきていた。
そもそも、あの人形にはもう一つ秘密があった。
首の後ろの鍵以外でも、手首と指を回す回数によって動きを変えることができるのだ。
刀鍛冶が剣士の弱点を突く動きを組んで戦わせる。そうでないと本当に意味のある戦闘訓練にはならないのだ。
だが炭治郎が参っていたのは人形の強さだけでなく、小鉄だった。
小鉄は分析力には長けているが、剣術の教えとしては素人中の素人であり、人の限界を知らないためえげつない訓練を強いた。
絶食、絶水、絶眠。そのせいで三日後の今日。炭治郎はとうとう意識を失い倒れてしまった。