第13章 春休みからの絶望と希望
幼い子供のように泣く千晶を珠紀は優しく慰めるように背中を撫でた。
そんなこんなで
文化祭&体育祭という忙しいイベントの季節になった。
余談だが…千晶が退院する前日…
約束通り千晶は姦し娘に壁ドンをした。
それを見ていた珠紀は腕を胸の前で組んで仁王立ち…そして、それはもう素晴らしいくらいの満面の笑みを浮かべていた。
学校が休みの日…珠紀は相変わらず千晶の家にいた。
「ねぇ…直巳…」
「ん?どうした?」
雑誌を読みつつタバコを吸っていた千晶が珠紀の呼び掛けに反応する。
「あたしさ…大学行くのやめる。」
「そうか。で?どうするんだ?」
「歌手になる。この前さ…色んな意見が聞きたくてマサムネさんに電話したの。そしたらさ…」
〖それじゃ、卒業したらエヴァートーンにおいでよ〗
「って言われた。」
「いいんじゃないか?」
「直巳ならそう言ってくれると思ってた。」
珠紀は嬉しそうに微笑んだ。
「あ、それともう1つマサムネさんがさ…」
〖エヴァートーンに来るならオーナーっていう立場もついてくるよ。〗
「だってさ。さすがに断った…あたしにはまだそういうのは無理だもん…」
珠紀はそう言って座ったまま背伸びした。
「無理と言わずにやってみろ。」
「へっ?」
「最初から無理だって言ったら何もかもが無理になる。マサムネだってお前一人でやれって言ってる訳じゃない。俺も薫もマサムネも…スティングレーと美那子だっている。行き詰まったら出会った仲間に頼ればいい。」
「よし!!じゃ、卒業したらエヴァートーンに就職だっ!!あ…」
珠紀は勢いよく立ち上がってテーブルにぶつかり、テーブルに置いてあった2人分のコーヒーをぶちまけた。
「それなら、その落ち着きのない所を治さないとな。」
「はう…そうですね…はい…」