第13章 春休みからの絶望と希望
「あたしが産むよ!!」
「え?」
垣内が言ったことに驚いて珠紀は涙でぐちゃぐちゃな顔を上げた。
「珠紀の赤ちゃんをあたしが産む!!だから…大丈夫。」
垣内はそう言って微笑んだ。
「ありがとう…」
珠紀も涙でぐちゃぐちゃな顔で微笑んだ。
「それに~珠紀の彼氏のこと知ってるけどそれくらいで振るような男じゃないって〜あ、ちなみに…生徒会メンバーとカッキーもサクラは知ってるから♡乙女の秘密♡」
と田代がウィンクして微笑んだ。
「そうそう。もし、それで振るようなら喉かれるまで歌ってもらうから。」
「カッキー…こわーい!!」
垣内がそう言うと田代が茶化して皆で笑った。
「なんてことがあったんだ。」
珠紀は放課後、生徒指導室で千晶と話していた。
「垣内のやつ…自分が聞きたいだけだろ…」
千晶は少し不機嫌そうに言った。
「それもあると思うけどね。」
珠紀はそう言うと微笑んだ。
「あのね…猫又のひぃばぁちゃんがさ…あたしに言ったんだ。」
「なんて言われたんだ?」
〖珠紀が背負ったその代償はその千晶という男が背負うはずだった失う物の代わりじゃ。お主は最悪の運命から千晶を救ったのだ。自信を持て〗
「だってさ。っ!?」
千晶は珠紀を突然抱きしめた。
「ごめん…ごめんな…俺のせいでお前の夢を壊したんだよな…」
そう言った千晶の声は震えていた。
「気にしなくていいんだよ。てか、謝って貰う為に言ったんじゃないよ。あたしは直巳がこうやってあたしのそばにいて抱きしめてくれて安心させてくれて…あたしの笑顔で直巳が元気になってくれたらそれでいいの。それに…これは直巳だけに言うんだけど…適合するドナーが見つかれば…子宮を移植して自然分娩もできるかもしれないって…そういう研究が今進められているんだって。何年先になるか分からないけどね。」
珠紀がそう言うと千晶は声を押し殺して泣いた。