第3章 透き通るように【時透×未来人】
ずっとここに居るのも危ないかもしれない。人食い鬼が存在するのなら尚更だ。
「無一郎君、どこか安全な場所無い?鬼っていうのが居るなら行こうよ」
「だけど……僕、鬼になっちゃってるよ」
きっと、この子は自分が嫌われるということに怯えているのかもしれない。私も怖かったから分かる。
「あのね、君が何者になろうとも君を大切に思っている人ならすぐに嫌って切り捨てたりしないよ。私には残念ながらそんな素晴らしい経験は無いけどね」
私があの場に居て、それを勘違いされて犯罪者と言われ、みんな離れて行った。
だけど、君はそんなことないと思う。私と違って、君はたくさん努力してきてるはずだから。
「私も夜の山は怖いから一緒に戻ろう。ねぇ、無一郎君」
「……うん、戻る。あのさ……」
無一郎君に見詰められる。私は首を傾げた。
「怖いから手繋いで」
私も言いたかったけど、戸惑っていて言えなかった言葉を言われて少し驚いていたが、私はすんなりと手を出して繋いだ。
夜の山は恐ろしく怖いが、手に微かな温もりを感じながら、無一郎君の言う蝶屋敷というところに向かった。