第8章 見えないトコロ
ルシエトにはエリアルが怯えている様に見えて、無性に腹立たしく思えた。
(そんなに、俺の事、嫌がるのかよ)
ルシエトは唇を噛んだ。
背の高いルシエトからは俯いているエリアルのピンク色の頬は見えなかった。
それでも、ルシエトは気を取り直し、
努めて冷静に尋ねる。
「エリー、欲しい物はないか」
王子らしく、威厳をもって。
「…いえ、コレと言って別に……」
エリアルは小さな声で答えた。
「服でも、宝石でも、何でも買ってやる」
そう言ってくれるルシエトに有難くも、エリアルは切なくなる。
(欲しい物……買えないよ…)
エリアルは唇をキュッと結んだ。
(だって…私は奴隷だし……無理だよ…)