第8章 見えないトコロ
感情の見えない闇空のような瞳。
纏う空気は気怠げだが、真っ直ぐにエリアルを見ている。
(怖い…)
ギュッッと目を瞑って待つ。
短くて長い時間。
「……エリー?ファロマが呼んでいたが、お前の愛称だな」
「はっ、はいっ」
あどけなさの残るエリアルの顔が紅潮しながらも、緊張を見せていた。
「……何故、俺にも?」
怪訝そうなルシエトの声。
「…父と母がそう呼んでくれてて……」
愛しい人々、
懐かしい日々、
大切な想い出。
想い出でしかない。
「母の代わりにはファロマが愛称で呼んでいるじゃないか」
(やっぱり、嫌、だよね…)
エリアルはそれでも、ルシエトを特別な人に位置付けていたから、特別な人には愛称で呼んでもらいたいと思ったのだ。