第8章 見えないトコロ
離宮にいる時にはさして見せることのない、
ルシエトの心に触れたエリアルは胸が温かくなった。
「ルシエト様…」
「故郷は金で買えないし、
今、お前を帰してやる訳にもいかないから、な」
偉そうないつもの調子で言葉にするが、
プイッと顔を背けたまま、照れているのは隠せなかった。
「ありがとうございます」
エリアルにはそれ以上の言葉が見つからなかった。
「…うれ…し…グスッ…ぅ…ぅ……」
不意に涙がこぼれた。
久しぶりに掛けてもらった温かい言葉と心、
そして久しぶりに想ったギリシアの事、
両親の事。
ルシエトは女の扱いに慣れていない。
気の利いた言葉も、わざと優しい口調をする事も出来ない。
そんなルシエトが女に泣かれて困らないはずがなく。
「なっ、ちょっ、エリアルっ、泣くなっっ!
泣かしたくなくてやった花なのにっっ…
あぁーもうっ」
慌てるルシエトの姿に、エリアルは泣きながらも笑ってしまった。