第1章 平和の象徴
トンネルは何処までも続き、出口は日の光で真っ白に輝いていた。
そこまで歩けば天の国に行くのではないかと見紛うほどの神々しさ。
さらには眺めていると光の中心に人の陰が見え始めた。
女を象っている。きっとあまりに神々しい場所であるために女神の幻覚を見ているのだ。
それは次第に近づいてくる。来栖は後光の眩しさに目を細めた。
「どうかなさいましたか?」
女神は鈴の転がるような声色だった。
来栖は神託と思い合掌する。
「ありがたや…ありがたや…」
きっとこれから先の旅の無事をお祈りくださるのだ、顕金駅の復興もこれで見えたも同然。
「甲鉄城のお侍さんでしょう?こんなところでどうしました?」
来栖はあまりに淡々と声をかけてくる女神に違和感を覚え、そのお姿を見るのも無礼と思いながらも静かに目を開けた。
すると目の前にいたのは、女神ではなく女の人間だった。
稲穂の如く輝く金色の髪が珍しい。
歳は同じぐらいに見える。
その女は来栖を覗きこむように見ていた。
恥ずかしさなのかなんなのか、込み上げるなにかに囃し立てられ一歩下がる。
「なっ!!貴様、何者だ!人か?」
それとも幻覚ではなくやはり女神の類なのか。
腰の刀に手をかける。
よく姿を確認すると彼女の背には背負い機関があり、腰には蒸気筒がある。
来栖は女のような者を睨んだ。
それは静かに笑う。
「私は、カバネリでございます。」