第4章 武士の休息
日が高くなると町は賑わいをみせ、通りは人が行き交うようになった。
無名は生駒を連れて商いを見て回っていたところ、技巧長の鈴木と吉備土が茶屋で話しているのを見つけそれに混ざった。
「ここは本当に平和だなー」
吉備土は団子を一つ頬張りながら言った。
どの人の顔にも緊迫感や恐怖はない。
カバネが目の前まで来ても慌てないくらいだ。
余程安心して暮らしているのだろう。
「ここのカバネリが相当の腕みたいだからね」
「昨日見ましたよ。Venvsみたいな女性でしたね。」
「もう男ってほんとああいうのに弱いよね!私だってあと五年もすれば…」
「無名じゃどうかな?」
生駒は笑いながら言うと無名の怒りを買っていた。
その様に鈴木と吉備土も笑う。
笑いが笑いを呼ぶ。
時間がゆっくりと流れている気さえする平和。
もうこのままこの駅に身を置こうか考えたものがいったいどれだけいるだろうか。
「顕金駅を取り戻したら無名がさんみたいになればいいだろ!」
伏せられた体で腕を後ろに引っ張られ痛みに耐えながら生駒は叫んだ。
「あぁ、そっか!」
一度は手を離したが無名だが、問題はそこじゃないとまた再開しだす。
だか店の外を横切った見知った武士の姿を見てその手を緩めた。
何か慌ててるような、変わった様子で足早に歩く来栖だった。
「あれ、今来栖が…」
「来栖がどうした?」
「なんか様子が変だったよ?」
無名と吉備土が店の中から顔を出して様子を見る。
やや猫背に歩く来栖は一人だった。
「また菖蒲様になんか言われたんじゃないか?」
ようやく立ち上がった生駒は捻った腕をぐるぐると回した。
だが吉備土は唸る。
今日は非番にしたはず。そして朝から確かの屋敷に呼ばれて…。
「俺が見てくる。」
吉備土は店を飛び出し来栖の後を追った。
「ちょっと!お団子もらうからねー!」