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明星の風【甲鉄城のカバネリ】

第4章 武士の休息


昼四つ。
夜更けまで続いたお祭り騒ぎのせいか町に民人は少なかった。
来栖は一人、またあの木漏れ日の降り注ぐトンネルを歩いている。
というのも遡ること数刻前。
暁が空を侵食していく最中、解散間際には来栖に声をかけた。来栖の顔にもさすがに眠気が出始めていた。


「明日もお忙しいの?来栖様」


突拍子もない問に戸惑うも答えは一つだ。
忙しいも何もない、菖蒲の警護がある。
他にも調達した物資の確認や今後の道のりについての会議もある。
だが自らが答ようとすると吉備土が隣に来て肩を叩いた。


「こいつは一日非番だ。好きに使って構わないぞ。」

「なっ!吉備土!何を言うか!!」

部下の勝手な発言に慌てる来栖を横には跳んで喜びぜひ屋敷へ遊びに来るようにと誘った。

「お一人が心細ければ、吉備土様や菖蒲様もどうぞご一緒に…」

「け、決して心細いなどとは!それに菖蒲様もお忙しいのだ!遊んでいる暇などない!」


それを聞いて菖蒲は眠い中さらにぐったりとしてしまった。明日も忙しいなんて聞くだけで疲れてしまう。


「明日はそれほど予定が入っていたのでしょうか…」

「菖蒲様!お気を確かに…」

「来栖が言ったのですよ!」

「はっ!申し訳ありません。」


周囲からも笑いが起き和やかな空気が流れた。
は来栖の戸惑いに構うことなく、起きたら来るようにと言って帰っていった。


「菖蒲様もお疲れだ。明日のことは静殿にお任せして、俺たちも少し休もう。」


吉備土が提案するのは珍しい。いつもならどうするかを聞いてくる。
だが確かに四方川の武士たちは休みを取れていなかった。
次に日が昇ったらこの駅も出発する予定になっている。それからはまた休む暇もなく旅が始まる。

来栖は決心したかのように呼吸をおいて、吉備土を含め部下たちへ休息を取るように伝えた。


「来栖もですよ?」


菖蒲からも釘をさされ、今日だけ有り難く自由な時間をもらった。
平和な高宮駅だから成せることだ。

だがいざ休もうとしても逆に時間をもて余し、どうしたら良いのか分からない。
洗濯は昨日のうちに済んでいるし、清掃も充分だ。
荷入れは明日の朝の予定になっている。
特段欲しいものもない。

雅客や歩荷たちもどこかへ行ってしまった。

そして行き場に困り今に至る。
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