第3章 行き場のない姉弟
他にもカバネを倒す蒸気筒や刀の話をした。互いに知っていることを共有するつもりだが、生駒の方がよっぽど詳しかった。
姉弟の武器は幕府からの支給であって、弾薬の調合の仕方を美馬に教わった程度。それぐらいは技巧の生駒はとっくに熟知している。
強いて言えばの履き物の踵についた小さな金具は目新しいものだった。細い管が背負い機関に繋がっていてる。
蒸気の噴射を利用して機動力を増すものだという。
だが威力がある故に数回しか使えず、小さいだけではまだ難があるとか。
普通の人間でも使いこなせればかなり便利な代物だった。
はその使い方を披露しようと立ち上がると、踵をトンと付け合わせ、高く飛び上がった。すると次の瞬間には蒸気が吹き出し、さらに高く飛び上がった。
その飛躍力に皆が思わず唸る。
ひらりと舞い戻る様も花びらの如く華麗で隙がない。
「それ私も欲しい!生駒つくってよ!」
「無理いうなよ無名…」
無名があまりに目を輝かせているとは設計図がないので1日だけなら貸せると言った。
ただし威力を発揮させるなら体重が重い男性には向かないので、やはり無名のような女の子にしか使えないだろう。それを聞いて此度は断念した。
借りている間にカバネが出ても問題になると。
それから話は代わり、甲鉄城の旅の出来事になった。
廃駅のことや美馬の起こした金剛郭の内乱。
鵺と化した無名とそれを救った生駒や白血漿なるものの存在。
それは空に朝焼けが見えるまで続いた。