第3章 行き場のない姉弟
「生駒は楽器に興味があるのか?」
峙が片付ける手は止めずに生駒を見た。
なんだろう、切れ長の目でどこか色香を放っている。
どうも顔を見て話しにくいので生駒は手元から目を離せなかった。そして特段楽器に興味はなく強いて言えばカバネに興味があると正直に答えた。
二人の兄弟はおかしなやつを見るような目を向けたがそんなことは慣れっこだ。
「それなら、カバネリって知ってるか?」
峙は変わらず手際よく片付けを進めながら訊ねる。
それと反して生駒は手を止めていきいきとした顔つきで答えた。
「ああ。俺がカバネリだ。」
「何!?」
「え、本当?」
「本当だ、俺はカバネに噛まれたが首を絞めてウイルスを止めたんだ!そしてカバネリになった!」
本人としては要約してうまく話した気でいたが二人の兄弟は噛まれても生きている上に自分の首を絞めるだのウイルスがどうだの、奇怪な内容に首をかしげた。
「私たちの姉様もカバネリですが、首は絞めていませんでしたよ。」
「枷紐っつうのはしてるけど絞めるほどじゃあないしな。」
二人が顔を見合わせていると、これまた待ってましたと言わんばかりに生駒は食いついた。
そう、女のカバネリの話を一番聞きたかったのだから。
「その人はどこにいったんだ?菖蒲様と会うって聞いていたんだけど…」
「どこだろうな、ふらっといなくなったし。」
「兄様、今夜、姉様と兄上様が見回りの日ですので、すでにそちらへ行ったかと。」
「あぁ!そうだったそうだった!そういえば言ってたな!」
どうやらこの高宮駅では毎晩四人の姉弟が二人ずつ交互に駅の外にカバネがいないか見回っているのだそう。
見つければスズナリをならす前に仕留めてしまうので、丸一にならないことが多いらしい。
これも民が平和に暮らすために必要な仕事であるとか。
そこまでできるのになぜ外へ出て戦わないのか。
単純に駅を守るので手いっぱいというのも理由だが、四人精鋭がいたところで全国のカバネを相手にすることなど到底できないと弁えていた。
カバネを駆逐させるならせめて半数は戦う術を身につけた者が必要だ。だが日ノ本はカバネが来る前から戦わず守りに徹した。
だがそれではいつまでたっても平和は来ないのだと生駒は怒りにも似た感情を噴きだした。