第3章 行き場のない姉弟
この駅の民人はいったいいつまで祭を続ける気なのだろうか。
幼子はいなくなったものの老いも若いも大人はまだまだ騒いでいる。
樓の上では男たちが楽器や機材を片付け始めていた。待ちきれない生駒は片付けを手伝う(つもりで話を聞く)ため樓に登った。
演奏は三人いたが一人足りない。
今いるのは寄せ集まった太鼓を叩いていた痩身の男と珍妙な三味線を弾いていた小柄な男。そっちは男の子というのが正しいか、まだ幼さを少し残していた。
突然樓に上がったきた生駒を見ても二人は驚かなかった。
「どうした?」
痩身の男が一番に声をかけてきた。
近くで見ると長身で整った顔立ち。女が黄色い声援を送るのも分からなくなかった。
「片付けるんだろ?手伝う。」
言ったはものの、何からするべきか分からない生駒は物珍しげに楽器をみた。良くみれば音楽がよく反響するように伝声管が其処ら中に設置されていて足の踏み場もない。
その様子を見て二人の男は顔を見合わせて笑った。
「管を外すのが大変なんです。こちらをお願いできますか?」
もう一人の幼げな男の方が丁寧に作業を説明してくれた。
やりながら話すと彼は14歳になると言っていた。
さらりとした長い髪はよく手入れされていて腰まで伸びていた。後ろから見れば女と間違いそうだ。
顔はもう一人の男とよく似ている。
「俺は生駒だ。」
「僕は恵といいます。そっちは兄の峙です。」
兄だという男の方を向けば軽く手をあげて返事した。
「生駒さん、甲鉄城の方でしょう?高宮は楽しんでいただけていますか?」
楽しいかと聞かれれば生駒は返事に困った。
カバネに備えてばかりの生活で楽しみかたを忘れたのかもしれない。ただその雰囲気には浸った気がする。
なんとなく体も音楽に乗った。それなら楽しいでいいかと思いそう返した。
恵は嬉しいそうに微笑んだ。
「ここの楽器、どれも見たことないけど何て言うんだ?」
生駒は樓の下にいるときから気になっていたものを聞いた。どれも外国のものらしく、しかし本物は手に入らないため日ノ本にあるものを改良したのだという。
一体そんな知識もどこで手にはいるのか聞けば、ここの城主が目新しい物に何かと興味を持ちやすく、カバネが来る前は外国との交流もしていたらしい。