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明星の風【甲鉄城のカバネリ】

第2章 カバネリの女


樓から花びらのようにひらりと舞い降りた主役。
歌い踊る群衆もさっとよけて道が開く。

その腰には背負い機関。足には蒸気筒。
は菖蒲と来栖の前にゆっくりと歩み寄ると騒ぎ立てぬようにと口の前で人差し指を立てた。

まだ曲は終わらない。
樓の上ではここで魅せろと言わんばかりに珍妙な三味線を持った男が弦捌きを披露していた。


そして遠くに見えた小さな光。赤く小さな点が二つともう少し大きな光が一つ。カバネの目と心臓だ。
来栖は刀に手をかけるがそれより早く蒸気筒が三発弾を吐き出した。

深紅に色づけられた蒸気筒はの手にちょうど良い大きさに仕立てられていた。
唐草の装飾は金で描かれている。

銃口の向けられた先に怪しい光はもうなかった。
心臓を確実に打ち抜いたのだ。

相当の距離はある。そして何より歌うのをやめない。
カバネを倒すそれすら演目の一つであるかのようだ。
むしろもっともっとと高宮の民人は掻き立てられた。


それに答えるかのように長屋の屋根を走るカバネが二体。
それを樓に戻りながら撃ち抜く。
心臓を。
そろそろ歌の終わりに近づいた時。またも長屋の屋根にカバネ現れたがそれを見ずとも撃つ。
の勇ましくも美しい様に民人はさらに盛り上がりを見せた。


彼女は本当に強いのだ。そしてその強さがあるゆえに民人は脅えない。絶対の信頼を寄せている。


生駒や無名も同じカバネリというの存在に益々興味が湧いただろう。
生駒はもう早いところ終わらせて面会にならないかと思った。


だがそんな願いを他所にその後も歌や踊りが続き、子の刻をまわろうとしていた。
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