第14章 〈勝デク〉ロマンチックな夜なんて似合わないけど
「ハッ、その通りだろ」
「……」
否定はできない。間違ってることを言ってるわけでもないし……。
「まァ、いい。おら、手出せ」
「手?」
大人しく彼の言葉に従って、彼の近くにあった右手を差し出す。
「そっちじゃねェ。左手だ」
「左?」
左手になんか……。
「あ? 何しとるんだ。早よ出せ」
「ま、待って」
さすがに鈍感な僕でも分かる。わざわざ左の手を要求するなんて……自惚れてるけど、考えられることは1つじゃないか。
「……やっと気付いたかよ」
「……」
恐らく真っ赤になっている僕の顔を見て、目の前の男は愉快そうにニヤリと笑う。
「か、ちゃ」
「おう」
かっちゃんはずっと背中に隠していた右手を僕の目の前に出す。その中には小さな箱が握られていて、彼が開けるとイルミネーションに負けないくらいキラキラ輝いている物が見えた。
「出久」
彼が僕の名前を呼ぶ。さっきはヒーローの僕に対しての言葉。今度は……僕自身に向けての言葉。
「どんな時でも、俺はお前の隣にいる。ずっと前から、覚悟決めて腹括ってる。自分の血が繋がった子供が産まれんくても、子供がいないままジジイになっても……お前の力がなくなることがあっても、お前が俺より先に逝くことがあっても、隣にいんのは俺だ」