第14章 〈勝デク〉ロマンチックな夜なんて似合わないけど
視界がぼやける。大粒の涙が頬を次々つたって止まらない。
彼が僕の頬をそっと撫でて、目尻から溢れる涙を指で優しく拭いてくれる。
「ぼ、くも……」
嗚咽が出そうになるのを堪えて言葉を紡ぐ。僕も君に伝えたいことがあるんだ……。
「僕も……どんな時も君の隣にいたい。ヒーローの時も、普段も。かっちゃんが大怪我して介護がいるってなっても、僕がやる。かっちゃんが……大怪我して僕のことを忘れても……側にいる」
「当たり前だわ」
口元を緩めて優しく微笑むと、僕の左手を掴んで薬指に指輪をはめる。そして、パレードで見た王子様のように手の甲にキスをすると、僕の顔に自分の顔を近付けて唇に触れるだけの口付けを落とした。
「離れんじゃねェぞ」
「うん……!」
君から離れるなんて、出会った時から頭の中にそんな選択肢はなかったと思う。これから先も、ずっと君の隣は僕がいい。
「出久」
ーー愛してる。
決して、ロマンチックなプロポーズとは言い難いのかもしれない。自分の欲も負の感情も全てを晒した上で、これからぶつかるであろう数々の壁を想像しながらも、僕たちはお互いに隣にいることを選んだ。