第14章 〈勝デク〉ロマンチックな夜なんて似合わないけど
「い、一応……」
「……」
彼は無言で僕に近付くと、天然パーマでもさもさしている頭をわしゃわしゃと触った。
「か、かっちゃ……」
「全然乾いてねェじゃねェか!」
彼は怒って、僕が使って鏡台の上に放ったらかしにして置いてあったドライヤーを手に持った。
「来い」
「う、うん」
言われるがまま、鏡の前の椅子に座ると、ドライヤーの電源が入って温かい風にもさもさの髪の毛が吹かれる。わしゃわしゃと慣れた手つきで髪の毛を乾かしてくれる。
「……」
僕はその様子を鏡越しに見つめる。ただ、僕の髪の毛を乾かしているだけなのに彼はとってもカッコよく見える。不思議だ……。
「おい」
ボケッてしてると、彼が声をかけてきた。いつの間にか、風の音は止まっている。
「終わったぞ」
「う、うん! ありがとう!」
全然気付かなかった。僕は席から離れると、再び自分のベッドへと戻って腰をかける。
「……」
ふと、窓の外を見るとまだライトアップされているパークの中が見えた。真ん中にある湖の水面が光に反射してキラキラと光っている。その少し左側に目を向けると、大きなクリスマスツリーに吊るされている飾りが星のように輝いている。