第12章 〈轟出〉能ある鷹は爪を隠す
「ってことがあってさ」
僕は居酒屋の個室で目の前に座っている顔の整った友達に笑い混じりで新居のことを話していた。
「それでさ、このことをかっちゃんに話したら何て言ったと思う?」
彼も良く知っている僕の幼馴染みの名前を出すと、目の前な彼はピクリと眉毛を動かした。
「『大変だな』って言って、そのまま帰っちゃったんだよ? 酷いよね〜」
かっちゃんは僕が勝手に呼んでるあだ名で、本名は爆豪勝己。僕の幼馴染みで、現在は雄英高校のヒーロー科を卒業して、僕と同じくNo.1ヒーローであるエンデヴァーの事務所でヒーローとして活動している。
そんな彼は昔は粗暴が悪くて自分本位に動くことが多かったが、色々あって今はだいぶ丸くなった。前ならこんな話をしても、怒鳴られていたと思う。それが相談には乗ってくれなくても、労いの言葉を掛けてくれるようになった。
「……どうするんだ?」
「ん?」
目の前の友人は表情はあまり変わってないが、心配そうに僕に聞いてくる。
「うーん……最悪、事務所に1ヶ月くらい泊まらせてもらおうかなって思ってる」
事務所なら当直用の寝る部屋もシャワーもあるし、ご飯はコンビニとスーパーが近くにあるから、そこで買えばいい。電子レンジもポットもトースターもあるから、インスタント食品も作れる。どうにかなる。