第11章 第3回、腐女子会 〜最強のダークホース、切島鋭児郎〜
「ちょっと待ってや、芦戸さん!」
ここまで畳み掛けるように喋った芦戸にお茶子が待ったをかけた。
「……なんか、今日はみんな荒れてるな……」
「ダークホースが最強すぎるからよ。緑谷ちゃんを自分の推し攻めから奪われないようにするためだから、仕方ないわ」
耳郎と梅雨はデクを巡るカプ争いを側から見守っている。
「どうしてなん!? どうして勝デクじゃないん!? 裏切ったん!?」
もともと勝デク派として、共に戦っていたお茶子は逆上して叫んでいる。
「違うよ、麗日。アタシは元々切出が本命なんだよー」
「なん……やって……」
ベートーヴェンの交響曲第5番『運命』がバックミュージックにぴったりな雰囲気で、お茶子は思わぬ裏切りに白目をむいてベッドの上へと倒れてしまった。
「ちょ、麗日!?」
「お茶子ちゃん、大丈夫?」
気を失ったお茶子を耳郎と葉隠が気遣う。
「あまりのショックに気を失っちゃったのね。ケロッ」
「……そんなことあるのか?」
冷静な梅雨を耳郎は振り返る。
「響香ちゃん、もし自分と同じ推しカプの人が本当は他に本命カプがいた時のことを想像してみなさい」