第9章 〈勝デク〉傷付けるのも、癒すのも……
さっきの人と話していたのを……もしかして、内容も?
「何してた。こんな時間に……引子さんはいいっつったんか?」
「……」
僕は黙った。返す言葉が見つからない。頭の中を色んな考えがぐるぐる巡る。
「おい! 何とか言ったら……」
「君には関係ないだろ」
「……」
かっちゃんが言う言葉を遮って僕は言った。思ったよりも冷たい言葉が自分の口から出てしまった。ーーでも、言うしかなかった。黙ったまま、変な勘違いをされて変なことを言い出されてもいけない。お母さんにこのことが伝わったら、もっとマズい。
「君だって、僕に関わるなって言ったじゃないか。僕はもう関わらないから……」
「……うるせェ」
かっちゃんが僕の胸ぐらを掴んだ。
「今のは誰だって聞いてんだよ! どこのどいつだ! どんな関係だ!」
彼は怒りの中に、どこか焦っているような表情を含ませた。ーー何でそんな顔をするんだ。よりによって君が……。
「……こんなことしたって答えるつもりはないよ」
ーー全部全部君のせいだ。僕がこんな汚らわしいことをしているのも、こんな惨めな気持ちになるのも……全部全部。
「……そんなら……」