第9章 〈勝デク〉傷付けるのも、癒すのも……
かっちゃんは僕の胸ぐらを掴んだ手を自分の方へ寄せた。そして、僕と顔を近付けると、僕の唇へキスをした。
「な……」
僕が驚いて口を開くと、彼の舌が口の中へと入って来る。
(な……)
くちゅくちゅと音を立てて、彼の舌が口の中を暴れる。
(や……)
「やめてよ!」
僕は彼を精一杯の力で突き飛ばした。いつもは彼に力で敵わないはずなのに、その時のかっちゃんは僕の弱いはずの力でも地面に尻餅をついていた。
彼が僕を見上げて睨み付ける。
(そんな顔したって……)
ーー君が悪いんだろ。
「……いつもいつも、僕を傷付けて……辛くて死にたくてどうにもならなくて……こんな思いをさせるのは君だ! もうこれ以上……僕を惨めな気持ちにさせないでよ!」
僕は怒鳴り声にも近い声で叫ぶと、全速力で家へと走った。走っている間、涙が止まらない。
ーーどうしてこうなった? いつから彼に見られてた? どうして彼はこんな時間にあんな所にいた? 彼はどうして僕にキスをした?
(どうして……どうして……)
ーーそもそも、僕はどうしてこんなことを始めてしまった? いつから始めた?
知らない間に、また過去の自分の行動を思い出して自己嫌悪に陥る。