第9章 〈勝デク〉傷付けるのも、癒すのも……
「ありがとう。楽しかったよ」
情事が終わりホテルを出て車に乗って、行く時と同じく家から少し離れたところで車を降りた。お金はホテルから離れる時に受け取り済みだ。
「また、メッセージ送ってもいいかな?」
「……はい」
メッセージを送られても、この人とはもう会うことはないだろう。僕はまた別の人を求めてネットの世界を彷徨うのだから。
「次も楽しみにしてるね。それじゃあ」
男の人は車窓を上げて、車を走らせた。車はどんどん小さくなっていく。
「……」
(帰ろう)
明日は休みだ。宿題をやって、勉強をして……それから、録り溜めたオールマイトの特番を見て……。
「おい」
そんなことを考えて、家に帰るために公園を後にしようとすると後ろから声を掛けられた。ーー聞き覚えのある声。こんな時間にいるはずがない人物の声。
驚いて後ろを振り返ると、そこには……。
「……かっちゃん……」
今、1番会いたくない人がいた。
ホテルで事後にお風呂には入った。それでも、知らないどこかの誰かと繋がった後の汚い自分を見られたくない人。
「……今の……誰だ」
「え……」
(まさか、見られてた?)