第5章 〈勝デク〉お前の気持ちがどうであれ
あれから、いろいろあって雄英高校は全寮制を導入することになった。その説明のため、相澤先生とオールマイトが家庭訪問に来た。
「オールマイト」
家庭訪問が終わり、オールマイトが帰ろうとしていたところを俺は呼び止めた。
「デクは、あんたにとって何なんだよ」
ーーずっと、疑問に思っていたことだった。オールマイトは贔屓はしない。生徒全員、同じように接している。でも、どこか違った。デクと話しているオールマイトは雰囲気が違う気がした。それはデクにも同じことが言えた。
「生徒だよ」
返ってきた返事は予想外のものだった。生徒? あの話し方が、目線が、雰囲気が普通の生徒に対するものなのだろうか?
デクがオールマイトに向けているものは? ただの憧れなのだろうか? 確かに、デクはオールマイトが大好きだった。小さい頃から、ずっと。でも、あの頃とは何かが明らかに違う。
ーーああ、そうか。
なぜか、自然に納得してしまった。
「そっか」
俺はオールマイトに背を向けた。
「あんたが言いたくねェなら、いいわ」
目頭が妙に熱い。
「ありがとよ」
ーー俺は今、どんな顔をしているのだろうか。泣きそうな顔? まさか。