第2章 ラジ王子
あれからゼン達に中に入れて貰い
白雪はゼンとさやの腕の手当てをした
器用に包帯を巻く白雪に
ゼンは感心したようにその手際の良さを眺める
既に包帯を巻き終えているさやは
木々にお茶を貰って、カップを傾けながら
木々とミツヒデのチェスの具合を見ていた
「ゼン、ここにあなた達は暮らしているの?」
ふと気になったさやが
ゼンに声をかける
「ここは空き家で、俺たちの遊び場だ
あっちでチェスしてる負けてる方がミツヒデで
余裕で勝ってるのが木々」
「へぇー…よろしくね木々さんミツヒデさん」
「あ、ああ…
と言うかゼン!
なんで見もしないのに言い切れるんだよ」
「なんとなく」
「現に負けてる」
「確かにね
頑張れミツヒデさん!」
ムスーっと膨れるミツヒデ
大きい体で子供みたいに拗ねているのを見ると
なんだか可愛らしくてつい笑ってしまう
「おい…笑うなよ」
「ごめんなさい
拗ねてるの、可愛らしいなと思って
男の人に失礼だね」
「なっ…!かわ、かわ…!?」
花が咲いたようにふわりと笑うさや
纏められた桃色の髪が
動くさやに合わせるように跳ねる
さやの後ろの窓から
陽の光が髪に当たり
なんだかさやの周りだけ
別の世界に入ってしまったように見え
ミツヒデは思わずその顔に見入った
「チェックメイト」
「…っあ!…ああー!」
「呆けた顔してるからよ」
木々の声に盤を見れば
どこをどうしても覆せない完全な負けが仕上がっていた
今日こそは勝てると思ったのに
肩を落として背もたれに体を預けるミツヒデ
いつの間にか白雪とゼンもいなくなり
部屋は3人だけとなっていた
「そう言えば名前まだ聞いてないな」
「あれ、そうだっけ?
じゃあ改めまして
白雪の姉のさやです。年は20歳
よろしく」
さやはそう言ってぺこりと頭を下げる
微笑みながら顔を上げると
ミツヒデも木々も同じく自己紹介をしてくれた