第1章 生まれと出会い
「ちょ!ゼン、怪我したのか!?」
「うわー痛そう」
「大丈夫だっ!」
思わずぽろりと漏れた言葉に
キツく睨まれる
さやはどうしていいかわからず
戸惑いながら微笑むが
ゼンの顔はより一層顰められるだけだった
白雪は慌てて鞄の中を探り出す
もう私が何回も助けられたあの薬だろう
「私、薬剤師をやってて
湿布薬を持ってるので良ければどうぞ」
「いらない!
毒かも分からんものをいきなり差し出されて使えるか!
森の小人じゃあるまいし
他人をあっさり信用出来ん」
キッパリとそう言い放ったゼンに
今度、顔を顰めるのは白雪の方だった
ゼンは表情を穏やかに緩めると
「分かったらもう行け」と優しく言った
「(あー、やらかすぞこの子)」
白雪は突きつけられたままのゼンの剣を手に取ると
自分の腕を目掛けて、叩きつけた
…ように思えたが
さっと差し出されたさやの手に剣はぶつかり
さやの左腕を赤く腫れ上がらせた
「ったぁ…強過ぎるよ白雪」
「お姉ちゃん!何やってるの!」
「「「……!」」」
へらっと笑ったさやは
驚く白雪に腕を差し出した
白雪は鞄から缶を取り出すとそれを湿布に塗りつけ
さやの患部にそっと貼った
「…生憎と、実の姉に毒を塗る趣味はないよ」
ゼンはぽかんとして剣を落とし
ミツヒデは大きな声で笑い出した
するとゼンもくつくつと笑い出す
「1本とられたな、ゼン」
「かっこいいー白雪ー」
「それは悪かった。俺はゼン」
「私は白雪」
こうして物語が始まる
初めはゆっくりと
それでも確実に何かを変えながら
「あともう少し…」
貴方に会えるのも、もうすぐ -------------