第1章 生まれと出会い
朝 -----
誰かの大きな声で目を覚ました
それから
すぐ近くにドスンッと大きな音がして
飛び起きる
しまった…!熟睡してた…!
何があってもいいようにと
なるべく耳を澄ませながら眠っていたというのに
思わず立ち上がろうとするが
熟睡していた自分の体は思うように動かず
腰に下げている剣を握るだけになった
「くー…!いってえ…!」
上から飛び降りてきたのか
そして着地に失敗したのか
銀色の髪の男が腕を押さえてしゃがみこむ
あー…なんだゼンか
びっくりした
相手があのゼンだとわかり
さやは剣から手を離す
白雪も物音に起きたようだ
「大丈夫かゼン!?
怪我は?頭打ってないか?1+1は?」
「2.......あれ?お前誰だっけ?」
「ミツヒデだよ!」
「ああ、そんな名前だったっけ」
「木々!お前まで何を言っているんだ!」
家の方から2人が駆けてきたと思うと
なんだかよくわからないコントが始まる
見たなあ、それ
実際に見るとお母さん感が凄いなミツヒデ
白雪がさやの服の袖をちょんと引っ張り
ここから逃げようと目で訴えている
「で?お前は本当に誰だ?
こんな森の奥で一体何を?」
「あ、いや…
私達は、その...家出中の身でして
ただ、人通りの少ない道を…」
目深にフードを被るさや達が
よっぽど怪しくみえるのか
ゼンはじろりと睨みつけ
手に持っていた剣で白雪とさやのフードをとった
はらりと落ちるフード
白雪の赤と、さやの桃が顕になる
3人は少し驚いて目を見開いた後
しげしげとその髪を見つめていた
「変わった髪を持っているな」
「「よく言われます」」
「あっ!その右手、痛めたんじゃ…」
白雪が目敏くゼンの赤く腫れ上がった腕を見つける
ゼンは高圧的な態度で
「それがなんだ?」と言い放った
全く信用してない相手に対して
圧が凄すぎるでしょゼン殿下…
さやがそう思い苦笑いを零すと
後ろに控えていた男が慌てたようにゼンの右手をみやる