第1章 生まれと出会い
あれから何日か過ぎ
馬車に揺られ、野道を歩き
食べるものもろくに食べまないまま
私達はひたすら隣国を目指した
国境を超えて隣国に入ってしまえば
ラジ王子でも中々手を出しずらいんじゃないかと
私が提案した
「(本当は別の目的な訳だけど)」
「どうしたの?さや」
歩みを止めるさやに白雪が
心配そうに声をかける
最近眠れてもいないし
体が心配なんだろう
さやはにこりと笑うと
力なく首を横に振り、地面を指した
「ここに赤い実がなってるけど
食べられるかな?」
「え?ちょっと待って…
うん、これは食用だね」
白雪が嬉しそうに笑い、実をつみだした
小さな実だが何も食べないよりは
いくらかマシだと思う
さやも白雪にならってつんでいると
白雪が行く先の方を見て固まっていた
「ん?なに?」
「あそこ家がある!
誰かいないかなあ…」
「そうだね行ってみよう」
白雪とさやは実をつむのをやめ
ふらふらとその家に近付く
きっとゼン達のいる家だ
ああ…明日はよく眠れる、はず…
さやはそう願い白雪の後に並んだ
ドンドンドン ------
「誰かっ!居ませんかー!」
門を大きく叩く白雪
その顔は疲れ切っていて
一縷の望みに縋るように門に触れていた
誰も出てこないとわかってるさやでさえ
今出てきてくれたら
どれだけいい事かと思った
「誰もいないみたいだね」
「うん、勝手に入る訳にいかないし…」
困った笑みでズルズルと壁に体を預け
座り込む白雪
さやは鞄からブランケットを取り出すと
自分も白雪の隣に座り、2人の体を包み込んだ
「ちょっと休もう
白雪無理しすぎだよ」
「ありがとう…」
白雪はそれだけ言うと
夢の世界へ旅立っていった