第1章 生まれと出会い
さやは男が去っていったのを確認すると
店の扉の前にCLOSEの札をかけ
呆ける白雪を椅子に座らせた
「白雪…どうする?」
「どう…って…」
「…ゆっくり決めればいいよ
私も来いと言われちゃったからね
逃げるも行くも、一緒だよ」
下を向きぎゅっとスカートを握り締める白雪
そっとその艶やかな髪を梳くように撫でた
もう昔みたいに触れることもなくなった
可愛い妹の髪
成り行きの心配はしてない
白雪の心を心配している
「ごめんね…お姉ちゃんまで巻き込んだ…」
「いいよ。巻き込まれなくても
着いていくつもりだった」
「…っ…ありがとう…」
白雪の髪をくしゃりと撫でると
さやは白雪の為にお茶を1杯入れ
自分の部屋に戻った
あの子がどうするかは、わかってる
物語を知らなくても
20年も姉をやってればすぐにわかる
「やるべき事をやろう」
さやはクローゼットの前に立つと
必要な物を探り始めた
*
コンコン -------
夕暮れ時、すっかり部屋の掃除も終わり
最小限持っていくものを決め終わると
控えめにドアがノックされた
「入っていいよ」
「…お邪魔します」
顔を出した白雪は何かを決意した表情で
小さい鞄を肩にかけていた
こんな時間まできっと私の事を含め
よく考えたんだろう
「…さあ、行こう。私達の次の物語へ」
「っうん…私達の道は私達が決める
バカ王子になんて従わない!」
ニコッと笑い合うさやと白雪
2人の意思は強く
夕暮れの空が暖かく、旅立ちを照らした