• テキストサイズ

【オビ】追い続ける【赤髪の白雪姫】

第5章 ラクスド










ふと窓の外に視線を移すと
屋根の上をオビが走っていくのが見えた




確かオビは盗賊の調査をゼンから頼まれていたはず


一旦報告にでも帰ってきたのかな?


器用に凸凹の上をぴょんぴょんと跳ねるオビを眺めていると
なんだか可笑しくなって頬が緩む




これで全身真っ白だったら、雪兎だよオビ


オビの猫目と真っ白なうさぎの長い耳の
アンバランスさを思い浮かべて

くすくすと笑いながら窓辺に寄りかかり



オビがこちら側に跳ねてくるのを見つめた



すると
ある所でオビが下を気にして、足を止めた


何かに戸惑いながらじっと見つめる先




なんと気なしにさやも下を覗くと


重そうな書類を抱えて白雪がフラフラとしながら
危なげな足取りで歩いているのが見えた




(あ……。こ、れって…。)




嫌な予感が全身を駆け巡った




当たらないで欲しいと祈るその予感は


前世の記憶がフラッシュバックして、確信に変わる





いつか見たひどくて、優しい物語が
今この窓の外で始まろうとしている





(見たくない……)




-------- 白雪が倒れる



オビが ----- 手を伸ばす




オビの優しさが私の胸をギリギリと痛めつける



見たくない、見ていられないと

確かにそう思っているはずなのに




足が、腕が


その場に凍りついて、離れない





ミツヒデに暖められた心も

木々に叱咤されて1歩踏み出した足も



ゼンから貰った頑張る勇気も




全て流れ出して




重くて突き刺さる冷たさの雪だけが
背中にのしかかり、凍りついた足まで埋もれて。




ただただ…、冷たくて苦しい。







それから私がやっと動き出した時には

オビも白雪もいなくなった後だった










/ 59ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp