第5章 ラクスド
「あーあ…こんなに冷たくして
さやは女の子なんだから体冷やしちゃだめだろう?」
『っ…。んー…あったかい…』
「あー、あー、ごほんっ
お前らいちゃつくのはいいが…、兵達が見てるぞ」
ゼンの声に振り返れば
顔を真っ赤にした、まだ若い兵士達が気まずそうに視線をそらした
ゼンも木々もやれやれと言った具合に
肩を竦め顔を見合わせている
周りの視線を感じたミツヒデは
顔を真っ赤にして違うと言わんばかりに手を激しく振った
「なっ!ちがっ!ってゼンもいつもしてるだろ!
違うからな!イチャついてないからな!これは兄弟の親愛的なあれで」
「俺は時と場所を考えて甘やかす。
とりあえずさやはゆっくり暖まれ
雪かきは暖まるまで禁止だ。」
『えー…それはミツヒデを借りていいって事?
ベッドまで連れて行っちゃおうかなー』
ミツヒデの胸板に顔を擦り付けながら
ぶーぶーと文句を言うさや
行為を連想させる言葉に
流石のミツヒデもしどろもどろになりながら
真っ赤な顔を更に燃やして困惑していて
呆れた木々はため息をつきながら
むんずとさやの両頬を鷲掴みにした
「さや、いい加減にしなさい
ミツヒデが困ってる」
木々に叱られたさやは
はーいと潔くミツヒデから離れると
ゼンに報告書を纏めてくると伝え
木々にからかわれる赤い顔のミツヒデを放置して
与えられている部屋へ向かった
ミツヒデの優しさ
木々の厳しさ
ゼンからの重いくらいの期待と信用
全てに応えられる自分でいたいと改めて強く、そう思った
さやはふらつく足に力を入れた
カツカツと静かな廊下に自分の足音が響く
外よりは幾らか暖かいと言えど
冷えた体を温めてはくれない
(外は寒そうだな…)