第5章 ラクスド
「(まったく主も人が悪いね。
あー…早く暖炉に戻りたい。)」
旦那はお嬢さんを呼びに行っているし
お嬢さんが来たら俺は近寄れない
とりあえず今は言われた仕事をこなすしかない
それにしてもこの音は、薪割り?
「(動ける兵士が他に…?)」
そっと壁に身を寄せながら
近付くにつれ大きくなる音の正体に顔を覗かせると
そこではさやが
何本も大きな木を携えて、それを次々と割進めていた
あんなに沢山…
1人で?何のために?
声を掛けた方がいいのだろうか
壁に背を預けながらため息をついた
薪割りをあの量1人でこなすのは余程骨がおれるだろう
俺は手が空いてるし
『あれ、オビ。何してるの?』
「へ!?あ、あー…何でもないですよ」
『…ふーん』
大量の割り終わった薪を背負って
オビの横を通り過ぎていくさや
オビは慌ててその背中を追った
小さい背中にあんなに薪を背負って
(いや別にさや嬢、小さくないでしょ
薪との対比…だよ、うん)
「よかったらそれ持ちましょうか?」
『いいよ。
それより何でオビはここへ?
…まさかサボってる訳じゃないよね?』
さやの傍に小走りで駆け寄り
爽やかな笑みで優しさを見せるオビに、どこか怪しむ様に視線を向けるさや
語弊があったかもしれない
これは”様に”じゃない、完成に怪しんでいる
やだなー、そんな訳ないじゃないですか
と軽口を叩いて手持ち無沙汰に頭の後ろに手をやるが
そんな様子でさえ
サボりを認めていると思われたみたい
(本当に俺仕事中なのに)
『まあ、いいけどさ
あの真面目王子は上手く仕事をやるって事の
意味を履き違えてる気がするから
オビみたいにうまーくサボってる人が1人くらいいると
手本になっていいんじゃないかな』