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【オビ】追い続ける【赤髪の白雪姫】

第5章 ラクスド







砦内の調査へ行くゼン達を見送り


さやは部屋を振り返ると
寝込んでいる兵士達へ近付いた。


物語と同じように、入口に近い兵士程
症状は軽く起き上がっている者もちらほらと見受けられた


先程案内してくれた兵士は
今はゼンの言う通り横になり休み始めているようだ




『体はどうですか?』


「あ、ええ…あまり芳しくはありません」




さやは近くにいた兵士の元へ
膝をつき声をかけた

見知らぬ兵士は辛うじて座ってはいるものの
額から大量の汗をかき、呼吸も荒く、顔色もあまりよくない


薪め…


どれだけ睨みつけても
煌々と兵士達を照らす光は

その毒を吐き続けるのを止めたりはしない


今は、少しでも兵士達が楽に過ごせるように
行動していくしかない




『食欲はありますか?パン粥とかいかがですか?』


「ありがとうございます。いただきます」



さやは手持ちのハンカチで兵士の額をそっと拭うと
出来るだけ優しく声をかけた


兵士は申し訳なさそうに頭を下げ
倒れ込むように体を寝かせた


食欲は少しはあるようだし

食べれる者は食べた方がいいだろう


部屋の中を再度見渡せば
この兵よりも軽傷の兵もいる事だし

寒いこの地域で食事から得られる熱は大切だ




(まずは、食事。

それから細菌感染を防ぐ為にも、体を拭いてあげるのも大事だし

やれる事は沢山、あるはず)















夕暮れ時



カツーンカツーンと砦内に大きな音が響き

特にすることもなく手を持て余していたオビが
ゼンに言われてその音の正体を見に、近付いていた



砦内の調査は
武器庫が不自然に空になっていた事以外
特に異常はなく

かといって武器庫には真新しい
鍵をこじ開けただろう傷が見受けられた


そんな中だからこそ、
断続的に鳴り続けるこの大きな音を放っておくのも
良くない事だとはわかってはいるが


何せ外は雪が積もり
少し歩いただけでも、袖から覗く指先が今にも凍りついてしまいそうだ






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