第1章 生まれと出会い
それでも醜さが顔を出すのは
この先の未来を知っているからか
オビに想われる未来を
「…羨ましいよ本当」
ぽつり呟いて出て行こうとすると
扉が開いた
(お婆さん?かな)
そこにいたのは、冷たい顔をした
城の兵団の服を着た男
「誰…?」
「さやどうした…の?」
「ふむ…奥にいる方が白雪殿でお間違えないですか?」
男は品定めをするように
さやと白雪を交互に見比べる
ずかずかと店の中に入り、上から下まで観察すると
何かをブツブツ呟いていた
「これはこれは…いや、しかし…」
「あの…ご要件はなんでしょうか?」
「ああ…申し遅れました
私、ラジ王子の伝令でございます
ラジ王子のご命令で明日白雪殿を愛妾として迎えるようにと」
「「は、はい…!?」」
なんの感情も込められず告げられる内容は
衝撃的で白雪もさやも目を見開いた
さやの驚きはまた意味が違ったのだが
(そうか…今日か…)
嬉しくて頬が緩みそうになるのを
下を向いて誤魔化した
早く、会いたい
「なんでもその珍しい赤い髪が気に入ったご様子で
そちらの女性も美しい桃色の髪をしておりますね」
「…ラジ王子の愛妾?」
白雪はまだ状況がよめていないようで
言葉を繰り返す
それもそうだ
白雪からしたら青天の霹靂だろう
「つまりはお妾さんですね」
「…っ私の様な町娘が髪色を理由に
迎え入れられるなんて…!
ラジ王子の恥になります!」
「そのラジ王子が気に入られたのです
とにかく貴女は明日正式に城へ迎え入れられます
もし宜しければ
そちらの女性も連れて来て頂いて構いませんよ
お二人とも今夜の内に身支度を」
白雪は必死に説得を試みるが
男は1度剣を手にすると、白雪を睨み
物言わぬさやに一瞥をくれ
店から立ち去って行った