第5章 ラクスド
馬を木に括りつけ
しばらくすると複数の蹄の音が近付いてきた
数からして2、3人といったところか
ゼン達だ
意外と早かったな
そう思い、道沿いに顔を出すと
先頭のゼンの白馬が見えた
「さや!」
『お早いおつきでゼン殿下』
急停止したゼンの馬の前に跪く
ゼンは馬から降り
何だその話し方と笑ってくしゃりと頭を撫でた
木々とミツヒデは砦の様子を不審そうに見上げている
「見張りの姿がみえないね」
「おーい!誰かいないのか!!
近衛兵団のものだ!おーーい!」
ミツヒデが砦に向かって大声で呼び掛ける
すると
静まり返っていた砦から
ガタガタっと音が鳴り、砦の窓が開かれた
「お、お待ちをっ」
弱々しい声が聞こえ窓が閉められたと思えば
門の通行用の小さな出入口から
小柄な少年が転がり出てきた
「おい、大丈夫か?」
3人が一斉に駆け寄る
べしゃっと地面に顔をつけた少年は
来客の声を聞くなり驚き、顔を上げた
ゼン達が少年の様子を見守る中
さやは1人顔を上げ、砦の方へ耳を澄ませた
オビがまだ戻らない
何かあった訳ではないだろうけど
「み、皆さんっ…!殿下までっ…!」
「定期連絡が途絶えたから見に来たんだ」
ゼンがそう言うと少年は慌てて
ここに居てはいけない、そう伝えようとした
ふとさやの姿が目に入った木々は
何か違和感を覚える
「そう言えばさや
オビはどこに…」
「主!」
問い掛けた木々に答える間もなく
砦の壁からオビが軽快に飛び降りてきた
自分以外に動ける者などいなかったはずの砦から
飛び降りてきたオビに驚く少年
「砦の中で皆が寝てますよ」
「寝てる?」
ゼンは首を傾げた
寝てる…とは
寝込んでいるということか?
何らかの流行病だろうか
木々はオビが砦から出てきたのを見て
納得して頷いた
砦の塀に登ったオビをさやが追うのは困難だろう
オビ1人の方が
様子を見るのには効率もいい