第4章 オビの監視
「珍しいな。
さやがオビの事についてそんな風に言うなんて
1番警戒してたのはお前だろう?」
『そうだね。…でも』
やっぱり警戒してると思われてたんだな
まああんなに顔を硬くして帰って来れば
そうも思うんだろうけど
不思議そうなゼンを見て
笑いが込み上げてくる
「何笑ってるんだ」
『いいや…。
ゼンみたいな綺麗な目をしてるよオビは』
それに料理が上手い!と言って笑うと
ゼンも何だそれと言って、笑ってくれた
そうやっていつまでも笑っていて欲しい
ゼンには笑った顔が1番だから
「ははっ…さて、さやがそこまで言うのなら
あの件、オビも連れていくか」
『あの件って…ラクスド?』
「そうだ。
定期連絡が遅れている
もう暫く待って使者を送ってからだが
何だか胸騒ぎがするんだ。どっちにしろ一度は視察に行く」
ゼンはそう言うと手元の資料へ目を落とした
ひと月前の定期連絡だ
そこには特には異常が見られず
いつも通りに任務に着いていると書かれているが
そんな大きな事に
私の一言でオビの同行を決めていいのだろうか
私が言わなくてもオビは同行させられるとは思うけど
澱んだ不安が心の中を掻き乱して
どう言う顔をしたらいいのか、分からなくなる
『…いいの?見習いの私なんかの言葉を信じて』
自信なさげに俯くさやに
ゼンは苦笑しながら優しくさやの頭の上に手を置いた
「何言ってるんだ
俺はもうとっくにお前を信じているぞ
誰より一番前で俺達の盾となって
俺達もお前の大事な人も護る
そう誓ったお前の目を、言葉を
俺は信じている」
強い言葉でそう声をかけるゼンに
目の前が潤んで、涙がこぼれ落ちそうだ
ありがとう。
私の誓いを覚えていてくれて。
ぐっと涙を拭き取り
飛びっきりの笑顔でゼンの顔を見る
『ありがとうゼン
私の言葉を信じてくれて
絶対、絶対後悔させないから!』
「ああ。頼りにしてるぞ
騎士見習い殿」