第4章 オビの監視
『えっ!?な、何かって!!』
「……いつも疲れた様子でオビ番から帰ってくるだろ
今日は何だか機嫌がいいようだから聞いただけだ」
やけに慌てるさやに
ゼンの中の疑いの色がどんどん濃くなっていく
わたわたとおかしな挙動をしながら
俺の顔を盗み見てくるさやを睨みつける
オビに手を出された…という事はないだろう
それなら逆に怒り狂っていても
さやならおかしくない
もしや、オビに口説かれて
さやもその気になってしまった…って事が!?
そんなの認められん!
万が一そんな事にでもなったら白雪に合わせる顔がない!
心の中で自問自答しながら
さやを見つめるが、少し赤くなった頬が
俺の考えを認めている気がして
より一層頭を悩ませた
さやは目が合ったゼンが
険しくしていた顔をもっと険しくして
眉間にも皺が寄り始めたのを見て
さやは呆れた顔でため息を吐いた
『ゼンが心配するような事は何もないよ』
「…本当だろうな」
『本当だって
オビに拐かされてないし、手も出されてない』
まあ実際には今日以外の日では
手を出されたと言っても過言ではないのだけれども
ゼンは今日の心配をしているみたいだから
余計な事は言わないに限る
(一瞬、ゼンがあの時の事知ってるのかと思って焦ったけど
私の見当違いでよかったよ本当。)
ゼンはエスパーかお前と驚きながら
ほっとした様子で顔を緩めた
『心配性だねゼンは。
そんなに心配する事ないと思うけどな』
「心配するに決まってるだろ!
あんな軟派な奴、きっと女癖も悪いに違いない」
オビの鞍替え宣言を思い出しているのか
緩んだはずの眉間にまた皺がよる
まあ軟派、に見えなくもないか今は
それでもオビは貴方達に必要な人だから
早く誤解が解けるといいけど
『…オビは、ゼンが思っているような人じゃないよ』