第1章 生まれと出会い
洗面台の鏡に眠そうな自分の顔が映る
桃色の長い髪がふわふわと揺れる
昔からくせっ毛でいつも巻いたように波打つ髪
嫌いじゃないけど
白雪の真っ直ぐで真っ赤な髪が
少し、羨ましい
「さやまだー?」
「はいはい…今行くって」
急いで身支度を整える
キツく髪を結って食卓につく
薬草をたっぷり使った朝食はいつも体に元気をくれる
「今日私の店を手伝ってくれない?
山に薬草を取りに行きたくて…」
「あーいいよ。店の準備をしておけばいいんでしょ」
「ありがとう!
ごめんね、朝早く起こして」
「いつもの事じゃない。気にしないで」
朝食を口いっぱい含んで
店の朝準備の工程を思い出す
今日は手伝いをしたらまた違う指南所へ行こう
「じゃあ行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
*
「いらっしゃい。お婆さん」
「あらー!今日はさやちゃんなのね!
白雪ちゃんは?
白雪ちゃんの見事な赤い髪が見たいわー」
「いつもありがとうね
もうすぐ来ると思うから、お茶でも飲んで」
店番をして少しすると
常連のお婆さんが店の戸をくぐってきた
白雪の髪が好きだと用もないのに
店に居座るこの人は、私には懐かない
「はい、どうぞ」
「どうもねー」
「ただいまー!
あれ、キノさんこんにちわ」
「白雪ちゃん!今日も綺麗ねー」
白雪が来た途端笑顔が変わるお婆さんに
さやはくすんだ思いを積もらせる
そりゃこの世界のヒロイン様だ
そっちの方がいいに決まってる
白雪はにこにこと笑顔で調薬を始める
お婆さんが鍋に火をつけたままだったと慌てて出ていく
「白雪、じゃあ私行くね」
「あ、うん。ありがとう!」
白雪に声をかけて戸口へ近付く
こんな醜い感情、剣を振って忘れるに限る
私だって白雪が大好きだ
キャラクター以上の気持ちと
家族として過ごしてきた絆がある