第4章 オビの監視
それからも
オビが私の事をよく聞いてきたり
最近の城内の様子や
ゼンの事、昨日の宴会の話など
オビが沢山の話題をふってくれて
楽しく森まで歩く事が出来た
「へぇー…じゃあさや嬢は
小さい頃から主に仕えようと決めてたんですねぇ」
『白雪は知らないけど
実は衛兵試験2回も落ちてるの
あの時ゼンと知り合えて話せた事は
とても幸運だったと思う』
「さや嬢ってば
主に恋でもしてるんですか?」
『…オビはあの人たらしを知らないから
そう言うけどね
ゼンを知った人は
多分皆同じ顔で似たような事を言うよ』
相変わらずさやをからかおうとするオビに
睨みを効かせながらそう言うと
ふとオビは視線を逸らし
何かを考え始めた
多少は思う事があったのだろうか
さやも黙り、森の中へ足を踏み入れていく
森の中は外より空気が澄んでいて
ここにいるだけで故郷を思い出すようだ
喧騒が遠く離れ
オビの歩く音と、踏みしめる草の音だけが
耳に届く
少し前を歩くオビの背中が
逞しく、大きくて
触れたくなった心に蓋をした
『オビ、何処まで行くの?』
「そうだなぁ…
森の端まで行ってみようよ」
『いいけど。今日は少し早めに帰らなくちゃいけないから』
大して興味もなさそうに
分かったと言って、木の上に登っていくオビ
一瞬で自分の背丈の2倍はある枝に
登って行ってしまったオビは
追いかけてこないさやを不思議そうに見て、手を差し出した
「早く登りなよ」
『私、登れないの』
「へ?…木登りした事ない、とか?」
下に見えるさやに呆けた声で返す
男らなら当たり前に
小さな頃は誰だって木登りしてたもんだ
さや嬢が女だってのは分かってるけど
あんな脚力の持ち主が
まさか登れないとは思ってもみなかった
『……高い所が、怖いのよ』
ぶすっとした顔でそう言うさやは
弱味を見せた事が気に入らないのか
オビはその言い草と意外な欠点に
驚いて、キョトンと見つめ返してしまった