第3章 巳早からのオビ
素早く反応したオビが
先程白雪に投げようとしていたクナイを取り出し
さやへ投げつける
2本は短剣で落とし1本は腕を掠った
鋭い傷みが走るが
気にしていられない
呆気にとられているオビに近寄り
剣を振り上げる
「お姉さんやるねぇ」
『必死なだけよ』
短剣で受け止めたオビから1歩距離を空ける
オビに近接戦闘は悪手だ
体術でとてもかなうきがしない
でも、私の戦闘スタイルは
短剣と長剣の長さの変化による意表をついた近接戦闘
不得意な分野の方が
より勝率が少ない、か…
さやは突きの構えで剣を構える
「(一気に勝負を決める気だね
上手く交わせるか、あるいは…)」
『っは…!』
地面を強く蹴りオビの体ど真ん中を狙う
軌道に短剣を隠して
今出来る全力で走る
オビは目を細めて
持っていた短剣を地面に放った
オビまで後一歩の所で
半身かわされ、右手の剣を叩き落とされる
ならばと
隠していた短剣を突き出すが
短剣はオビの左頬に逸れ
かすりもせず腕を掴まれた
「はい、つーかまえた」
『くっそ…!』
ギリギリと腕を締めあげられ
短剣もぽろりと手から滑り落ちた
痛いとオビを睨みつけようと顔を上げると
金色の瞳が
意外と自分の近くにあって
強い眼差しは
私だけを強く見つめていて
ぎゅっと心臓が掴まれるような感覚
『(綺麗…オビ…だ…)』
頬に熱が集まる
その時
足を引っ掛けられ体が後ろに傾く
オビに転ばされたんだ
そう思った時にはオビに掴まれている手を
離さないとばかりに握り締めていた
「あ、ちょっ…!」
『っ…!』
オビの体も一緒に傾いていく
ドスンっ
体が地面に倒れる
目を瞑って衝撃に耐えると
体の上に温もりがのしかかってきた
重い…痛い…
それに何だか唇まで暖かい…?