第3章 巳早からのオビ
『…やっぱり見てて
気分のいいものじゃないねこれは』
いくら怪我をしないからと言っても
妹に怖い思いをさせた事は許し難い
さやの顔に影がさしこむ
わかっていた事でも
妹かそうでないかでこんなにも感じ方が違うのか
はあとため息を吐いて、白雪の様子を伺うと
白雪が矢を抜き取り走っていく
オビもきっと移動しただろう
さやもそれに合わせて
移動を開始する
木の間を人目につかないよう移動しているはずなのに
全力で走る私は
見失わないようにするので精一杯だ
全く移動速度が早すぎだって
ちょっとはゆっくりして欲しいね
すると
オビが1つの木に止まった
視線の先を探れば中々狙うにはいい位置に
白雪の姿が見える
「早く帰んなお嬢さん」
オビが呟く声が風に乗って微かに聞こえる
さやは
やっと追いつくとポケットに忍ばせておいた
小石を手に持ち、オビの足元へ素早く投げつけた
「っ…!?」
驚いたオビが木から飛び上がり
下へ降りてくる
白雪はゼンと合流したようだ
(よかった…)
何かを話している2人を見る
オビもさやの視線に気付き
白雪を見るとゼンが来た事に驚き、咄嗟に木の影に身を潜めた
『さて、お兄さん
白雪に何をしているのかな?』
「…あんた朝見かけたよ
やっぱり気付いてたんだね」
『気付いてたか…
んまあそう言う事にしておこうかな
で、白雪に矢を放ったのはお兄さんだね』
見ない
なるべく貴方の顔は見ない
見てしまえば、隙になる
わかっているもの
自分が今どう言う顔をしているか
腰の剣をすらりと抜き、構える
『ちょっとお相手願おうかな』
「綺麗なお姉さんのお誘いなら、喜んで」
オビも腰から短剣を取り出し構える
一定の距離を保って相手の出方を伺う
オビに真っ向勝負で勝てる気はしない
でも
負ける訳にもいないし
ちょっとくらい手間取ってくれると
有り難いね
さやは渾身の力で地面を蹴り
剣の届く距離まで一気に詰める